漢方の基礎理論

気・血・津液(水)~人体を動かす3つの構成要素~

漢方では、「気」・「血」・「津液(水)」それぞれが重要な体の構成要素であると考えられています。 それぞれが常にバランスを保ち、コントロールし合うことで生理機能を円滑にしています。 これらが過不足なく巡っていれば体全体のバランスがとれるのですが、 どれか1つでも不足または滞れば歯車は回らず、 他も準じて不足したり、滞ってしまいバランスが崩れてしまいます。 この3つのバランスが崩れることで体や精神は、不快・不調を起こすと考えられているのです。

気は、形として見えない存在で、生命活動の源となっています。 漢方中医学の考え方では、この「気」は生命のエネルギーそのものを指し、 これが無くては、血も津液(水)も動きません。 私たちは日頃から「病は気から」「元気がある」など「気」という言葉を使っていますね。 「気」が衰えれば体も病気になりやすいのです。
「気」は、その働きや根源の特徴に分けて、 身体に存在する「真気」「元気」「衛気」「宗気」「営気」 と栄養として外部から受け取る「精気」「穀気」などに分かれています。 また、「気」には生まれ持ってきた「先天の気」と、 のちに外から取りこんだ営養や病因によって生み出される「後天の気」があります。 漢方中医学では後天の気を補い、改善していこうと考えられているのです。

● 気の働き
生命活動の源・全身を押し動かす
生命力・免疫力・自律神経
陽に属する
温煦作用:体を温める
推動作用:血や水を動かす(血や水を体じゅうに巡らせる、新陳代謝を促進する)
固摂作用:血や水が不必要に体外に漏れないようにする
気化作用:汗や尿・便などの生成・排泄調整 
防御作用:病因から身を守る
体内に宿る気は、真気、元気、宗気、営気・衛気の5つ
先天の気(元々もって生まれた気)は腎に宿る
気を動かすのは肝、バランスをとるのは肺
後天の気(生後生み出す気)は血と水がもつ栄養によって生まれる

※胃・脾臓で得た栄養分のことを「水穀精微」といいそこから生まれる後天の気を「水穀の精気」という。

血は狭義の意味では血液そのものだけでなく肉体の栄養物質に至るまでを指し、 「飲食物から得た栄養素と体内に取り込んだ精気(酸素)と 結合してできた赤く栄養価の高い液体」と定義します。
主な働きは全身に栄養を巡らすことで、それは肉体だけでなく、精神活動にも深く関わります。

● 血の働き
血=血液(栄養分も含む)と血液のはたらき
生命維持と生命活動に必要な栄養素
全身に栄養を運ぶ
陰に属する
精神活動:思考・感情・判断
体を潤す
血は精と気から成り立つ
血は脾(胃)で得た精をもとに、肝で生成・貯蔵され、心の脈によって動き、腎によって正常維持される。

津液(水)

津液(水)はリンパ液など血液以外の体内全ての水分とそのはたらきを指します。 「陰液」とも呼び、その役割は、細胞・組織を潤し、排泄を潤滑にし、体温保持にも関わります。 津液(水)の運行・代謝には、腎・脾・肺の臓器が深い関係を持ちます。

● 津液(水)の働き
血液以外の体液
生命維持と生命活動に必要な水分
陰に属する
汗・涙・尿・リンパ液・胆汁
全身を潤す
排泄を潤滑にする
体温を保つ
津液(水)は脾(胃)で得た精で作られ、腎によって肺に運ばれ、肺によって全身を巡り代謝され、腎によって正常維持・排泄される

これら3つの構成要素は身体にとって最も重要な歯車です。 働きが常にバランスよく運行することが理想なのですが、 うまくいかずに、不足したり滞ったりしてしまうと、 身体にだけでなく心にも重大な影響を与えるようになります。 この気・血・津液(水)を運行しているのは 五臓五腑です。

自分の気・血・津液(水)のバランスをチェックしてみましょう。 ⇒ 気血水チェックシート